支援船キャロライン・シュエスト、横須賀寄港


横須賀基地13号バースに停泊する支援船キャロライン・シュエスト。駆逐艦バリー(DDG52)の向こう側にその姿が見える(22.7.12 星野 撮影)

7月11日、支援船キャロライン・シュエスト(CAROLYN CHOUEST)が横須賀基地に入港し、13号バースに接岸した。

The Edison Chouest Offshore社の所有するキャロライン・シュエストは、米海軍軍事海上輸送司令部(MSC)がチャーターしている支援船だ。
2008年までは、米海軍原子力深海潜航艇NR−1の海洋調査、水中捜索・回収などの活動を支援する任務に従事していた。
だが、2008年にNR−1が退役した後のキャロライン・シュエストの任務は明らかにされてこなかった。

しかし、近年のキャロライン・シュエストの任務をうかがわせる記述が、アメリカ特殊作戦軍(USSOCOM:United States Special Operations Command)の2022米会計年度大統領予算教書(Fiscal Year 2022 President’s Budget)に掲載されている。
USSOCOMの2022米会計年度大統領予算教書の150頁に、キャロライン・シュエストの名前が記載されていて、この艦の任務とそれにかかわる予算案が示されているのだ。


アメリカ特殊作戦軍(USSOCOM)の2022米会計年度大統領予算教書(Fiscal Year 2022 President’s Budget)の150頁からの引用。
赤い線で囲んだところにキャロライン・シュエストのことが書かれている。

それによるとキャロライン・シュエストは海上前方移動基地であって、SOCPAC(Special Operations Command Pacific 太平洋特殊作戦軍)及びNSWC(Naval Special Warfare Command 海軍特殊作戦コマンド)の作戦上の必要や任務計画のために、335日間持続的に利用可能な直接的な支援を行っているという。
つまり、形式上キャロライン・シュエストをチャーターしているのはMSCではあるが、実際には特殊作戦部隊の作戦行動を支援・指揮する海上前方基地として、USSOCOM傘下の部隊によって特殊作戦の前方洋上基地として使用されてきた、ということだろう。 実は物騒な船なのだ。

そしてこの特殊作戦部隊の海上基地が、近年、米インド太平洋軍の管轄地域である、東南アジアや日本周辺で任務に就いているらしいことは、いくつかの記録からうかがうことができる。
たとえば、2019年の米軍とマレーシア軍との共同演習「CARAT 2019」にキャロライン・シュエストが参加したことを米インド太平洋軍が発表しているし、昨夏には佐世保やホワイトビーチに、昨年12月に佐世保に、そして今年3月には岩国基地に出没している。
そのキャロライン・シュエストがなぜ今回、横須賀基地に入港したのか、理由はまだ不明だ。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


船体後部にはクレーンや構造物が設置されており、コンテナや資材などが置かれているのが見える。特殊作戦部隊の任務に使用されるものなのかもしれない(22.7.12 星野 撮影)



米海軍特殊作部隊のシールズなどが使用する戦闘艇 CCA(combatant craft-assault)と見られるボートが2隻、キャロライン・シュエストの後部に積まれている(赤丸で囲んだ部分)。
キャロライン・シュエストがまさに特殊部隊の作戦行動のための海上基地として使われていることを示しているのではないか (22.7.15 非核市民宣言運動・ヨコスカ 撮影)


2022-7-15|HOME|